不動産用語集

用語の頭文字

あ行

IT重説

不動産取引における重要事項説明を、インターネット等を利用して対面以外の方法で行なうこと。宅建取引業法が定めている重要事項説明における対面原則の例外である。

IT重説の導入に当たっては、関係書類を十分に確認できること、双方向で確実にやりとりができること、宅地建物取引士が実際に説明することなどの要件を満たすとともに、消費者が不利益を被らないよう措置する必要がある。そのための条件等について検討・検証が進められ、不動産の売買・賃貸に当たっての重要事項説明について、一定の条件を満たす場合に、IT重説を対面による説明と同様なものとして認める運用がなされている。

アイランドキッチン

壁に接することなく独立して設置された調理台の形式。部屋の中で島(英語でアイランドIsland)のようなかたちとなることから名づけられた。

アイランドキッチンは、対面型のキッチンであるとともに、オープンキッチン(ダイニングルームや居間とつながった形式)でもある。開放感やコミュニケーション性に優れている一方、設置のために部屋の広さや強力な換気装置が必要とされる。

なお、アイランドキッチンに類似した調理台の形式として、一端のみ壁に接するかたちのもの(ペニンシュラキッチン)がある。

アウトドアリビング

居室のように利用する屋外の空間。和製英語である。

アウトドアリビングに利用するのは、中庭、バルコニー、屋上などで、これらに手を加えて室内のように使用する。雨風への対応やプライバシーの確保が必要だが、開放感のある居住スペースになるとされる。

空き家対策特別措置法

適切に管理されていない空家等について、その状態を是正するための措置を定めた法律。正式には「空家等対策の推進に関する特別措置法」といい、2014(平成26)年に制定された。

同法は、市町村による空家等対策計画の策定、空家等の所在や所有者の調査、データベースの整備等を規定している。

さらに、ア)倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態、イ)著しく衛生上有害となる恐れのある状態、ウ)適切な管理が行なわれないことにより著しく景観を損なっている状態 、エ)その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態の空家等を「特定空家等」として指定して、是正のための立入調査や、措置の指導、勧告、命令、代執行を行なうことができるとする規定を定めている。

また、措置の勧告を受けた特定空家等に係る土地については、固定資産税等の住宅用地特例から除外することとされている。

アスベスト

石綿(せきめん・いしわた)のこと。

繊維質であるため紡績することができる。また、耐久力があり、溶融点が1,300度程度と高く、熱絶縁性が大きく、耐薬品性も大きいなど、安価で優れた性質を持つため、さまざまな用途に使用されてきた。建築素材としても、断熱材、保温材、耐火材として大量に利用された。

しかし、石綿の繊維を肺に吸入すると、肺がんや中皮腫の原因となることがわかり、1975年には吹き付け使用が禁止され、以後、段階的に使用の規制が強化 されて2006年には全面的に輸入・製造・使用等が禁止された(代替品が確立していない特定の部材については例外的に確立までの間は禁止が猶予されてい る)。

建物の解体などの際には、使用されていた石綿が飛散するなどの恐れがあり、それに伴う健康被害を予防するため、作業方法などについて一定の基準が定められている。

遺言

死後の法律関係を定めるための最終意思の表示をいい、日常用語として、「ゆいごん」と読むことが多い。

その最大の役割は、遺産の処分について被相続人の意思を反映させることで、遺言がない場合は民法の規定に従って相続が行なわれる(法定相続)が、遺言を作成しておくと、遺産の全体または個々の遺産を誰が受け継ぐかについて自らの意思を反映させることができる。
また、遺贈の方法により、相続人以外の者に遺産を与えることも可能である。ただし、それが有効であるためには、民法に定められた方法で行なわなければならない。一般的には、遺言書の全文(日付と氏名を含む)を遺言者が自筆で記述して押印する自筆証書遺言、遺言内容を公証人に確認してもらってから公正証書にする公正証書遺言、遺言内容を秘密にして公正証書にする秘密証書遺言のどれかの方法による。

また、手続きを円滑に進めるため遺言執行者を指定することができ、遺言執行者は相続人の代理人とみなされる。遺言の執行は、弁護士、司法書士、行政書士、信託会社などが手がけている。

遺産分割

相続財産を相続人が分けることをいう。

遺言により各相続人の取得する財産が具体的に記されている場合を除いて、相続人全員で協議して、誰が、どの財産を、どの方法で、どれだけ取得するかを決めなければならないのである。

遺産分割の協議は、民法で「遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」とされている。遺産分割協議に相続人全員が参加していなかった場合は、その遺産分割協議は無効となる。

また、協議は相続人間での任意の話し合いであり、相続人全員で協議し、全員が賛成すれば、遺言や法定相続分に関係なく財産をどのように分けることも自由である。なお、協議ができないときや不調のときには、家庭裁判所で決めてもらうこととなる。

具体的な分割の方法としては、遺産そのものを現物で分ける現物分割、相続分以上の財産を取得するときにその代償として他の相続人に金銭を支払う代償分割、遺産を売却して金銭に変換したうえでその金額を分ける換価分割がある。

なお、遺産共有状態にある共有物に共有に関する規定を適用するときは、法定相続分(相続分の指定があるケースは、指定相続分)により算定した持分を基準とする。また、共有者は、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者(氏名等不特定を含む)の不動産の持分を取得することができるが(2023年4月1日以降)、相続開始から10年を経過していなければならない。

遺産分割協議書

遺産分割について協議・合意した内容を記載した書類。

相続に当たっては、相続人が複数のときには、被相続人の遺産を分割しなければならない。この場合、遺言書の内容どおりに分割するときや、民法に規定する相続分(法定相続分)どおり分割するときには、遺産分割について協議する必要はなく、遺産分割協議書を作成する必要もない。一方、これ以外の場合には、相続人が、相続割合や分割の方法を協議して合意する必要がある。遺産分割協議書はその合意内容を記載した書類である。

遺産分割協議書には、相続発生の事実、相続人の全員が合意したこと(相続人全員の署名及び実印の押印)、相続する遺産の内容(財産目録)、遺産分割の割合及びその方法を記載しなければならない。

相続は遺産分割協議書がなくても有効に成立するが、相続した遺産について、預金の名義変更・払い戻し、不動産の名義変更、相続税の申告などを行なう ときには、遺産分割協議書の提示を求められることがある。

なお、相続税の申告・納税期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内 である。期限までに遺産分割の協議が成立していないときは、各相続人が、民法に規定する相続分または包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして、期限までに申告・納税しなければならないとされている。

遺贈

民法に定める方式の遺言により、特定の者に財産を贈与すること。

民法では、民法に定める方式による遺言のみを認めており、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、特別方式による遺言が定められている(民法第967条、第976条から979条)。
これらの遺言において、遺言をする者が、特定の者に対して財産を贈与する意思表示をすることを「遺贈」という。

特定の者に財産の何分の一を与えるというような抽象的な意思表示を「包括遺贈」、この家を与えるというような具体的な意思表示を「特定遺贈」と呼んで区別している(民法第964条)。
「包括遺贈」には、民法の「相続」の規定の大部分が適用されるが、代襲相続・遺留分減殺請求権の規定は適用されない(民法第990条)。

位置指定道路

特定行政庁から道路位置指定を受けた私道を、一般に「位置指定道路」と呼んでいる(建築基準法第42条第1項第5号)。

位置指定道路は「建築基準法上の道路」であるので、位置指定道路に面する土地では、建築物建築することができる。

一般媒介契約

媒介契約の一つの類型。
一般媒介契約とは、次の1.および2.の特徴を持つ媒介契約のことである。

1.依頼者(すなわち売主等のこと)が「依頼した宅地建物取引業者」以外の「他の宅地建物取引業者」に重ねて媒介を依頼することが原則的に自由である。
2.依頼者自身が、自分の力で取引の相手を発見し、直接契約することが原則的に自由である。

なお、依頼者が、「依頼した宅地建物取引業者」以外の「他の宅地建物取引業者」に重ねて依頼する場合において、その「他の宅地建物取引業者」の名称と所在地を、「依頼した宅地建物取引業者」に通知するかどうかにより、一般媒介契約はさらに次の2つの類型に分かれる。

1)明示型の一般媒介契約
明示型の一般媒介契約とは、「他の宅地建物取引業者」の名称と所在地を、「依頼した宅地建物取引業者」に対して通知する義務があるとする媒介契約である。
2)非明示型の一般媒介契約
非明示型の一般媒介契約とは、「他の宅地建物取引業者」の名称と所在地を、「依頼した宅地建物取引業者」に対して通知しなくてよいとする媒介契約である。

委任状

一定の事項を特定の者に委任する旨を記載した書面。委任する事項(委任事項)、委任する相手(受任者名)などを記載する。

委任状がなくても委任契約は有効だが、受任者が委任事項(例えば各種の申請手続)を実施する場合に委任状の提示を求められることがある。この場合には、委任状の発行が直近(通例は3ヵ月以内)でなければならないとされることが多い。

委任状には、委任の意思を表示するべく委任者が自署しなければならない。また、委任は多くの場合に代理権の授与を伴うが、このときには、委任状はその証拠となる。

なお、委任事項、受任者名などを記載せず、その白地部分の補充を他者に任せた委任状(これを「白紙委任状」という)を発行することがある。この場合には、白地が補充されたときに委任状の効力が発生する。ただし、補充権のない者が補充する、補充者が権限を濫用するなどの恐れがあり、白紙委任状の発行については、その是非を含めて十分な注意が必要である。

違約金

不動産売買契約では、当事者の一方が債務を履行しない場合には、債務の履行を確保するために、その債務を履行しない当事者が他方の当事者に対して、一定額の金銭を支払わなければならないと定めることがある。
このような金銭を「違約金」と呼んでいる。

「違約金」と「損害賠償額の予定」とは、債務を履行しない当事者が支払う金銭という意味ではよく似た概念である。
しかし「違約金」は、実際に損害が発生しない場合でも支払いの義務が生じるという点で、「損害賠償額の予定」とは大きく異なっている。

ただし実際の売買契約においては、「違約金」という言葉を「損害賠償額の予定」と同じ意味で使用していることも多い。
さらに民法(第420条)では、違約金という言葉の意味について、売買契約書でその意味を明示していない場合には、違約金は「損害賠償額の予定」の意味であるものと一応推定されると定めている。

このように「違約金」は、「損害賠償額の予定」と同じ意味であると解釈されるケースも実際には多いのである。
そのため売買契約書において本来の意味での「違約金」を定める場合には、その意味を明記しておくことが望ましいといえる。

なお、宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者売主となる宅地建物の売買契約においては、「損害賠償額の予定」と「違約金」との合計額は売買代金の2割を超えてはならないと定めている(宅地建物取引業法第38条)。

これは売買取引に精通していない一般の買主が不利にならないように特に保護している強行規定である。
宅地建物取引業者同士の売買取引については、この宅地建物取引業法第38条は適用されない。

インボイス方式

定められた形式の書類に基づいて消費税額を算定する制度。「適格請求書等保存方式」ともいう。

インボイス方式は、仕入れ税額控除に当たって、定められた形式の書類(インボイス)に記載された税額のみを認めることとなるため、消費税を適切に課税することができるとされている。

インボイス方式を実施するには、インボイスの発行事業者を登録するなどのしくみを整備する必要がある等のため、その適用は、2023年10月1日からの予定である。

請負契約

当事者の一方がある仕事を完成することを、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことをそれぞれ約束する契約。例えば、住宅の建築工事、洋服の仕立て、物品の運搬などの契約がこれに該当する。

請負契約の目的は、仕事の完成であって労務の供給ではないから、仕事の目的物が定まっていて、通常は、目的物を引き渡すことで仕事が完成する。

請負契約については民法に一般的な規定がある。また、たとえば建設工事の契約に関しては建設業法、運送契約については商法等のような特別法の適用がある。

民法は、
1)請負契約による報酬は目的物の引渡しと同時に支払わなければならないこと
2)引き渡した目的物が契約不適合の場合には、注文者は、補修等の追完請求報酬減額請求損害賠償請求、契約解除をすることができること(ただし、与えた指図等によって生じた不適合を理由にすることはできない)
3)契約不適合による請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内にその事実を通知しなければならないこと
4)請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できること
などを定めている。

なお、民法には、請負人の担保責任の存続期間について特別の定めがあったが、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって削除された。ただし、住宅の新築工事の請負に関しては、特定の部位についての契約不適合責任の存続期間は10年とされている(住宅の品質確保の促進等に関する法律)。

内法

建物の床面積を測定する際に壁の厚みを考慮せず、壁の内側の部分の面積だけを「床面積」とする考え方のことである。

不動産登記法では、分譲マンションなどの区分所有建物を登記する場合には、この内法の考え方で床面積を計算することとされている(不動産登記法施行令第8条)。

この反対に、建物の床面積を測定する際に、壁の厚みの中心線を想定し、この中心線に囲まれた面積を「床面積」とする考え方のことを「壁心(へきしん・かべしん)」という。

ちなみに建築基準法では、建築確認を申請する際には、建物の床面積はこの壁心の考え方で測定することとしている(建築基準法施行令2条1項3号)。

従って、分譲マンションなどの区分所有建物については、建築確認を申請する際には床面積を「壁心」で求めるが、その後に登記をする際には床面積を「内法」で求めているのである。

SDGs

国連が定めた世界が共通に達成すべき目標。SDGsは、英語のSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略語である。2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、2015年9月に国連で開かれたサミットで採択された。

持続可能な開発とは、「将来の世代がそのニーズを充足する能力を損なわずに、現世代のニーズを充足する開発」である。そのための目標群がSDGsで、「貧困に終止符を打つため、経済成長を促し、教育、健康、社会的保護、雇用機会を含む幅広い社会的ニーズを充足しながら、気候変動と環境保護に取り組む」ための17の目標(ゴール)で構成されている。目標は、人間・豊かさ・地球・平和・パートナーシップという広い分野にわたって設定されていて、その達成のためには、経済成長、社会的包摂、環境保護を調和させる必要があるとしている。

また、SDGs の17の目標については、その達成を具体的に評価する全部で169のターゲット(具体目標)が定められている。たとえば最初に掲げられた目標「すべての場所におけるあらゆるかたちの貧困を終わりにする」(目標1)については、「2030年までに、すべての場所において、1日1.25ドル未満で生活する極貧の人々をなくする」(ターゲット1.1)など7つのターゲットがある。

ALC造

ALC造とは、 ALC製のパネルを使用した建築構造のことである。

以前は高級戸建住宅の外壁や間仕切りをALCとすることが多かったが、最近では賃貸マンションにもALC造が多用されるようになった。

オーナーチェンジ

賃貸住宅の所有者が、賃借人が入居したままその建物を売却することをいう。

購入者は新たに賃借人を見つける必要がなく、投資用のワンルームマンションでよく使われる方法である。その際に、賃借人から預かっている敷金の引渡しや建物の管理ルールの引継ぎなどに注意が必要である。

か行

買い替え特約

不動産の買主が、別の不動産を売却した代金をもって当該不動産の購入費用に充てることを「買い換え」という。

こうした買い換えでは、別の不動産の売却が不調に終わったときには、当該不動産の購入ができなくなるケースが多い。

そのため実際の不動産取引では、別の不動産の売却が不調に終わった場合には、買主は不動産を購入する契約を解除し、契約を白紙に戻すことができるという特約を盛り込むことがある。こうした特約を「買い換え特約」と呼んでいる。

「買い換え特約」は、買主が一定の場合に解除権を行使することを認める特約であるので、「買い換え特約」では次の事項を明記しておくのが望ましい。

1.買主に解除権が発生するための具体的な条件(どのような物件がいくらで、いつまでに売却できないときに買主に解除権が発生するのか)
2.買主が解除権を行使した際の売主の義務の内容(売主が契約締結時に受領した手付金や代金を返還するか否か)
3.買主が解除権を行使した際の買主の義務の内容(買主に損害賠償義務が存在しないこと等)

改築

建築物の全部もしくは一部を除却すると同時に、これと同様の規模・構造の建築物を建てることをいう。

建築基準法では、改築も「建築」の一種とされており(建築基準法第2条第13号)、改築についても建築確認を申請する必要がある(建築基準法第6条)。

区分所有

分譲マンションのように、建物が独立した各部分から構成されているとき、その建物の独立した各部分を所有することを「区分所有」という。

「区分所有」が成立するためには、次の2つの条件を満たす必要がある(区分所有法第1条)。

1.構造上の独立性があること
これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることを指している。ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りない。

2.利用上の独立性があること
これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味している。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能であるということである。

つまり、構造上・利用上の独立性がある建物であれば、分譲マンションに限らず、オフィスビル・商業店舗・倉庫などでも区分所有が成立することができる(詳しくは「区分所有建物」へ)。

区分所有建物

区分所有建物とは、構造上区分され、独立して住居・店舗・事務所・倉庫等の用途に供することができる数個の部分から構成されているような建物のことである。

区分所有建物となるためには次の2つの要件を満たすことが必要である。

1.建物の各部分に構造上の独立性があること
これは、建物の各部分が他の部分と壁等で完全に遮断されていることを指している。ふすま、障子、間仕切りなどによる遮断では足りない。

2.建物の各部分に利用上の独立性があること
これは、建物の各部分が、他の部分から完全に独立して、用途を果たすことを意味している。例えば居住用の建物であれば、独立した各部分がそれぞれ一つの住居として使用可能であるということである。

上記1.と2.を満たすような建物の各部分について、それぞれ別個の所有権が成立しているとき、その建物は「区分所有建物」と呼ばれる。区分所有建物については、民法の特別法である区分所有法が適用される。

代表的なものとしては分譲マンションが区分所有建物である。しかし分譲マンションに限らず、オフィスビル・商業店舗・倉庫等であっても、上記1.と2.を満たし、建物の独立した各部分について別個の所有権が成立しているならば区分所有建物となる。

なお区分所有建物では、建物の独立した各部分は「専有部分」と呼ばれる。
また、この専有部分を所有する者のことを「区分所有者」という。

廊下・エレベータ・階段などのように区分所有者が共同で利用する建物の部分は「共用部分」と呼ばれ、区分所有者が共有する。

また建物の敷地も、区分所有者の共有となる(ただし土地権利が借地権である場合には「準共有」となる)。このとき区分所有者が取得している敷地の共有持分は「敷地利用権」と呼ばれる。

従って区分所有建物においては、区分所有者は、専有部分の所有権、共用部分の共有持分、敷地の共有持分という3種類の権利を持っていることになる。

クーリングオフ

一定期間、無条件で契約の申込みの撤回または解除ができる制度。消費者を保護するための措置で、訪問販売、電話勧誘販売などに適用されるが、一定の宅地建物の取引もその対象となる。

クーリングオフの適用があるのは、

1.宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地建物売買契約において、2.その事務所やそれに準ずる場所以外の場所で申込みや締結がされた場合であり、3.撤回または解除ができるのは8日間以内である。

撤回または解除は書面で通知しなければならないが、その理由などを示す必要はなく、発信日を明確にすれば良い。その通知があったときには、売主は速やかに手付金等受領した金銭を返還しなければならない。

競売

債権者が裁判所を通じて、債務者の財産(不動産)を競りにかけて、最高価格の申出人に対して売却し、その売却代金によって債務の弁済を受けるという制度のこと。

契約不適合

売買や請負において、契約に基づいて引き渡された目的物が、種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合していないことをいう。

たとえば、土地の地目が異なっていれば種類が不適合であるし、建物の耐震強度が不足していれば品質の不適合となる。また、受け取った品物の個数が違えば数量の不適合である。

目的物が不動産の場合には、品質に関する不適合の判断が問題となる。「住み心地」のような品質は評価が難しいし、耐震性、耐火性などは設計や工事記録を精査しないとわからない。あるいは、既存住宅などについては経年的な品質の劣化をも考慮しなければならない。住宅性能評価や住宅インスペクションを実施することは、契約不適合に対応するためにも有効である。

また、不動産売買において契約表示面積と実測面積のあいだに過不足があったときには、契約において実測面積を基礎に代金額を定めるとの合意がある場合に契約不適合となる。

契約不適合の場合には、買主・注文者は、売主・請負人に対して、履行の追完請求(補修や代替物等の引渡し請求)、代金減額請求、報酬減額請求、損害賠償求又は契約解除権の行使をすることができる。ただしこれらの請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から1年以内に不適合である旨を通知しなければならないとされている。

このルールは、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって明確化された。

契約不適合責任

売買契約や請負契約の履行において、引き渡された売買の目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、売主・請負人が買主・注文者に対して負うこととなる責任。債務不履行により生じる責任のひとつである。

買主・注文者は、契約不適合責任を負う売主・請負人に対して、履行の追完請求(補修や代替物等の引渡し請求)、代金・報酬の減額請求、損害賠償請求又は契約解除権の行使をすることができる。ただしこれらの請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内に不適合である旨を通知しなければならない。

民法(債権関係)改正前は、売買の目的物に隠れたる瑕疵があったときの責任等について特別の規定が定められていたが、改正によってこの規定が削除され、隠れた瑕疵があった場合を含めて、目的物が契約に適合しない場合の規定に統合・整理された(改正法の施行は2020年4月1日から)。この統合・整理された規定では、引き渡した目的物が契約に適合しない場合には、引渡した者(売主・請負人)に履行の追完、代金の減額等の責任が生じることとなる。この生じる責任が契約不適合責任である。

軽量鉄骨構造

鉄骨構造の一つ。
軽量鉄骨構造とは、次のような特徴を持つ鉄骨構造である。

1.軽量鉄骨を柱・として使用する。
2.ブレース(brace:留め具)で柱・梁を対角線につなぐことにより、水平方向の外力に対抗できる構造をつくる。
3.木質系パネル・軽量気泡コンクリートパネル・窯業系パネルなどで壁・床を構成する。

従って、「軽量鉄骨構造」とは、在来工法木造建築物における木造軸組を「軽量鉄骨とブレース」に置き換えたものであると考えることができる。

こうした「軽量鉄骨構造」は、一般住宅やアパートに使用されることが多い。

建築条件付き土地

建て売りといえば、土地とそこに立つ住宅がセットで販売されるものだが、建築条件付き土地の場合は、売り建てともいうように、土地を売るに当たって、一定期間内に売り主または売り主が指定する者との間で当該土地に建物を建築する請負契約を結ぶことを条件にしている。指定期間内に建築請負契約が締結されない場合は、契約は白紙解除となり、預かり金などは全額返還される。

建ぺい率

敷地面積に対する建築面積(建物の水平投影面積)の割合(%)。
例えば、敷地面積が100平方メートル、その敷地上にある住宅の建築面積が50平方メートルならば、この住宅の建ぺい率は50%ということになる。

建物の建ぺい率の限度は、原則として、用途地域ごとに、都市計画によってあらかじめ指定されている。

原状回復

ある事実がなかったとしたら本来存在したであろう状態に戻すことをいう。

例えば、契約が解除された場合には、一般に契約締結以前の状態に戻さなければならないとされる(原状回復義務を負う)。また、損害賠償の方法として、金銭で補償するのではなく損害が発生する以前の状態に戻す方法(原状回復による賠償)が認められる場合がある。

借家契約では、退去時の原状回復義務を特約していることが多いが、「本来存在したであろう状態」にまで戻せばよく、借りた当時の状態にする必要はないとされている。つまり、契約に定められた使用方法に従って通常の使用をしていれば、経年劣化があってもそのまま返還すればよい。

国土交通省が公表した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、賃借人が負担すべき原状回復費用は、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損」の範囲に限るとしている。

原状回復義務

賃貸借契約の終了時に、賃借物(たとえば賃貸住宅)を借りてから生じた損傷を回復する義務。原状回復義務は賃借人が負う。

賃借人は、通常の使用収益によって生じた損耗及び賃借物の経年変化については、回復する義務はない。損傷が賃借人の責めに帰すことができない事由によるときにもそれを回復する義務を免れる。

なお、賃貸人は、賃貸物の使用収益に必要な修繕(たとえば賃貸住宅の維持補修)をする義務を負っている。また、賃貸借契約の終了時に、受け取った敷金(賃貸借に基づいて生じた賃借人の債務額を控除した残額)を返還する義務がある。

現状有姿

現況有姿のこと。
現在あるがままの状態を意味。

山林や原野などを造成工事をしないで販売することを「現況有姿分譲」といい、市街化調整区域別荘地などの分譲でよく行なわれる。通常は、電気、ガス、水道などの施設が整備されていないために、そのままでは生活できない。分譲広告の際には、現況有姿分譲地であってそのままでは生活する施設がない旨表示しなければならない。

また、売主瑕疵担保責任を免れるために、売買契約中に「現況有姿で引渡す」旨記載して取引することがあるが(これを「現況有姿売買」という)、引渡しまでの間に目的物に変化があったときなどまで責任を免れることができるかどうかについては、消極的(ただちには免れない)に解する意見が強い。

公売

納税者が国税・地方税を納税しない場合に、国または地方公共団体が納税者の財産を差し押さえたうえで自ら売却し、その売却代金から税金の支払いを受けるという制度のこと。

個人情報保護法

個人情報の適正な取り扱いに関する規定を定めた法律。正式な名称は「個人情報の保護に関する法律」で、2003(平成15)年5月に公布された。

この法律は、高度情報社会の進展に伴って個人情報の利用が著しく拡大していることに鑑みて、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護するために制定された。そこでは、個人情報は個人の人格尊重の理念のもとに慎重に取り扱われるべきものとしている。

個人情報保護法の規定のなかで重要なのは、個人情報のデータベース等(たとえば顧客リスト)を事業の用に供している者(個人情報取扱事業者)に対する個人情報の取り扱いに関する規制である。

個人情報取扱事業者には、個人情報の取り扱いについて、
)利用目的の特定
)利用目的の範囲を超えた利用の禁止
)不正手段による取得の禁止
)取得に際しての利用目的の通知
)情報の正確性確保
)情報の安全管理措置
の義務が課されている。さらに、
)第三者への提供が制限され、
)本人による情報開示請求、訂正請求、利用停止請求を規定して原則としてその請求に従わなければならない
とされている。

また、同法は、個人情報取扱事業者の個人情報の取扱いについては、個人情報保護委員会(2016(平成28)年度までは主務大臣)が監督することとし、その監督に従わない場合には罰則に処すことができること、政府は個人情報の保護に関する基本方針を定めなければならないことなども規定している。

さ行

差押

競売(または公売)の前提として、あらかじめ債務者の財産の売却等を禁止するような裁判所の命令のこと。

仮差押が、債務者の財産を一時的に凍結する命令であるのに対して、差押は競売(または公売)の手続きが開始すると同時に行なわれるものである。

差押の原因は、次の3つのどれかである。

1.抵当権等を実行するための任意競売が開始されたこと
2.裁判所の判決等にもとづく強制競売が開始されたこと
3.税金の滞納にもとづく公売が行なわれること

敷金

建物賃貸借契約を新規に締結する際に、借主から貸主に対して、次のような目的のために預けられる金銭。

1.賃料の不払い・未払いに対する担保
2.契約により借主が負担すべき修繕費用や原状回復費用の前払い

将来契約が終了した場合には、上記1.や2.の金額を控除した残額が、借主に対して退去後に返還される。なお、関西等では「敷引」の慣行がある。

敷金

建物の借主が、賃料その他賃貸借契約上の債務を担保するため、貸主に交付する金銭をいう。
敷金は、契約が終了した場合に、未払賃料等があればこれを控除したうえで借主に対して退去後に返還される。

修繕積立金

管理組合が管理費とは別に共用部分や付属施設などの修繕を目的とした長期計画に従って修繕を実施するために、区分所有者から毎月徴収した金銭を積み立てたものである。
管理費と同様、一般的に専有部分の専有部分の面積の割合で月額料金が定められている。

重量鉄骨構造

鉄骨構造の一つ。
重量鉄骨構造とは、次のような特徴を持つ鉄骨構造である。

1.重量鉄骨(H形鋼など)を柱・として使用する。
2.柱・梁の接合部をボルトにより「剛接合」する。
(「剛接合」とは外力を受けても接合部が回転・変形しないという意味である)
3.木質系パネル・軽量気泡コンクリートパネル・窯業系パネルなどで壁・床を構成する。

このように「重量鉄骨構造」は、剛接合された骨組を持つ非常に頑強な構造となっている。
そのため、重量鉄骨構造は3階建ての一戸建て住宅や、3階建ての共同住宅で多用されている(ただし最近は2階建ての重量鉄骨構造も見られる)。

セットバック

1. 建物の上部を下部よりも後退させること。

2. 2項道路(建築基準法第42条第2項の規定により道路であるものとみなされた幅4m未満の道のこと)に面する土地では、次の1)または2)の範囲に建物を建築することができない。

1)その道路の中心線から水平距離2mの範囲
2)その道路の片側が崖地、川、線路等である場合には、その崖地等の側の道路境界線から水平距離4mの範囲

つまり、2項道路はその幅が4m未満であり、そのままでは防火等の面で十分な道の幅を確保することができないので、2項道路を含めて4mの範囲内には、建築物や塀などを造ることを禁止し、4mの空間を確保しようという趣旨である。

その結果、2項道路に面する土地では、自分の土地でありながら、一定の部分には建築をすることができないこととなる。これを不動産業界ではセットバックと呼んでいる(セットバックとは英語で「後退」という意味である)。

このセットバックについて次の点に注意が必要である。

a)セットバックしなければならない部分には、建築物を建築できないのみでなく、門や塀や擁壁を建築することもできない。
b)セットバックしなければならない部分は、容積率や建ぺい率を算出する場合には、敷地面積から除外される。

例えば、幅2mの2項道路(片方が崖地等ではない)に面していて、道路に接する長さが10m、奥行が10mの正方形の土地があるとしよう。
この土地の本来の面積は100平方メートルである。セットバック部分の面積は1m×10mなので、10平方メートルである。よって、この土地の建築可能部分の面積は90平方メートルである。
この土地の容積率が80%であるとすると、この土地に建築できる建物の延べ床面積は、最大で90平方メートル×80%により、72平方メートルとなる。

セットバック

2項道路(建築基準法第42条第2項の規定により道路であるものとみなされた幅4m未満の道のこと)に接する場合において、建物を建築・再建築する際、道路の中心線から2mとなるよう敷地の一部を後退させることをいう。
なお、セットバックした部分は道路とみなされ、建物を建築することはできない。

専属専任媒介契約

宅地または建物の売買または交換の媒介の契約(媒介契約)のうち、専任媒介契約であって、かつ依頼者は、依頼した宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買等の契約を締結することができない旨の特約が付いた契約をいう。

つまり、依頼者は取引の相手方を自分で発見しても、媒介を依頼した宅地建物取引業者の媒介なしには契約できないことになる。

専属専任媒介契約を締結した場合には、宅地建物取引業者は、契約の相手方を探索するため、5日以内に、媒介の目的物に関する事項を指定流通機構に登録しなければならないとされている。

専任媒介契約

宅地または建物の売買または交換の媒介の契約(媒介契約)であって、媒介の依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買または交換の媒介または代理を依頼することを禁ずる媒介契約をいう。

この契約の有効期間は、3月を超えることができないとされている(契約期間の更新は可能)。

専任媒介契約を締結した場合には、宅地建物取引業者は、契約の相手方を探索するため、7日以内に、媒介の目的物に関する事項を指定流通機構に登録しなければならないとされている。

善管注意義務

取引上において一般的・客観的に要求される程度の注意をしなければならないという注意義務のこと。

すべての取引においてこの注意義務が要求されるものではなく、この注意義務が要求される取引の種類は限られている。

1.善管注意義務の意味
善管注意義務とは、正確には「善良なる管理者の注意義務」のことであり、民法第400条の条文に由来する。
民法第400条では、特定物(中古車・美術品・建物のようにその物の個性に着目して取引される物のこと)の引渡しの義務を負う者は、その引渡しが完了するまでは、その特定物を「善良なる管理者の注意義務」をもって保存しなければならない、と定めている。
この民法第400条の趣旨は、例えば美術品の売買契約が成立した場合に、契約成立後から美術品の引渡しまでの期間においては、美術品の売主は、一般的・客観的に要求される程度の注意義務(すなわち善管注意義務)をもって保管しておかなければならない、ということである。

従って、契約成立後から美術品の引渡しまでの期間に、何らかの事情で美術品が破損したとすると、売主が一般的・客観的に要求される程度の注意義務(善管注意義務)を果たしていたかどうかが問題となる。善管注意義務を果たしていたのであれば、売主には過失がないことになるので、売主には債務不履行責任(民法第415条の責任)は発生しないことになり、破損による損失は危険負担(民法第534条)として処理されることになる。
このように善管注意義務は、その義務を果たしていれば、債務者が責任を回避できるという点に実益がある。

2.善管注意義務が要求される場面
民法第400条では、特定物の引渡し前に善管注意義務が要求されると規定するが、これ以外にもさまざまな民法の条文で善管注意義務が要求されている。
具体的には、「留置権にもとづいて物を占有する者(民法第298条第1項)」「質権にもとづいて物を占有する者(民法第350条)」「委任契約の受任者(民法第644条)」などである。

3.善管注意義務よりも軽い注意義務
民法では、善管注意義務よりも軽い注意義務を要求する場合がいくつかある。
例えば、無報酬で物の保管を引き受けた者(受寄者という)は、その物の保管について「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」を負う(民法第659条)。
また、親権者は子の財産を管理するにあたっては、「自己のためにすると同一の注意をなす義務」を負う(民法第827条)。
このように「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」「自己のためにすると同一の注意をなす義務」と表現するのは、いずれも注意義務の程度が「善管注意義務」に比べて軽いということを意味している。

従って、例えば無報酬の受寄者が保管していた物を、その受寄者の不注意によって破損した場合には、受寄者の注意義務は軽いので、重大な不注意(すなわち重過失)があるときだけ、受寄者は損害賠償責任を負う。逆に、軽い不注意(すなわち軽過失)であるならば、受寄者は損害賠償責任を負わない。

相続

死者の有した財産上の一切の権利義務を、特定の者が包括的に承継することをいう。

相続は、死亡のみによって、意思表示を要せず一方的に開始される。ただし、遺言により相続の財産処分について生前に意思を明らかにし、相続に反映させることができるが、この場合には、遺留分の制約がある。

財産の継承者(相続人)は、1.子・直系尊属・兄弟姉妹がこの順で先順位の者が(同順位者が複数あるときには共同して均等に)、2.配偶者は1.の者と同順位で常に、その地位を得る。子・兄弟姉妹の相続開始前の死亡や相続欠格等の場合には、その者の子が代わって相続人となる(代襲相続)。
また、相続人は、相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に、相続の承認、限定承認、相続放棄のいずれかの意思表示が必要である(意思表示がないときには相続の承認とみなされる)。

遺言の指定がないときの相続分(法定相続分)は、1)配偶者と子のときには、配偶者2分の1、子2分の1、2)配偶者と直系尊属のときには、配偶者3分の2、直系尊属3分の1、3)配偶者と兄弟姉妹のときは、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1である。

なお、法定相続分は遺言がない場合の共同相続人の権利義務継承の割合を定めたもので、遺産分割は相続人の協議等によってこれと異なる割合で行なうことができる。

た行

宅地建物取引業者

宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物業法第2条第3号)。

宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。
なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。

宅地建物取引士

宅地建物取引士資格試験に合格し、都道府県知事の登録を受けて、宅地建物取引士証の交付を受けた者のこと。

宅地建物取引士は、一定以上の知識・経験を持つ者として公的に認められた者である。宅地建物取引業者は、事務所ごとに従事者5名に対して1名以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければならない(詳しくは宅地建物取引士の設置義務へ)。

宅地建物取引において特に重要な次の3つの業務は、宅地建物取引士だけが行なうことができるとされている(宅地建物取引士ではない者はこれらの業務を行なうことができない)。

1.重要事項説明
2.重要事項説明書への記名・押印
3.37条書面への記名・押印

宅地建物取引士となるためには、具体的には次の1)から5)の条件を満たす必要がある。

1)宅地建物取引士資格試験に合格すること
宅地建物取引業に関して必要な知識に関する資格試験である宅地建物取引士資格試験に合格することが必要である。なお、一定の要件を満たす者については宅地建物取引士資格試験の一部免除の制度がある。
2)都道府県知事に登録を申請すること
この場合、宅地建物取引に関して2年以上の実務経験を有しない者であるときは、「登録実務講習」を受講し修了する必要がある。
3)都道府県知事の登録を受けること
登録を受けるには一定の欠格事由に該当しないことが必要である。
4)宅地建物取引士証の交付を申請すること
宅地建物取引士証の交付を申請する日が宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年を超えている場合には、都道府県知事の定める「法定講習」を受講する義務がある。
5)宅地建物取引士証の交付を受けること
氏名、住所、生年月日、有効期間の満了する日等が記載されている宅地建物取引士証の交付を受けて初めて正式に宅地建物取引士となる。

宅地建物取引士は、宅地建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地建物の流通に資するよう公正誠実に業務を処理するほか、信用・品位を害するような行為をしないこと、必要な知識・能力の維持向上に努めることとされている。

担保責任

特定物の売買において、目的物が契約不適合であった場合に、売り主が負わなければならない責任。詳しくは、「契約不適合責任」を参照。

特定物とは、取引当事者がその物の個性に着目して取引する物のことで、美術品、中古車、不動産(土地・新築建物・既存建物)などである。このうち、不動産については、その性格から担保責任が問われる場合が多い。

なお、工事の請負などにおいても、引き渡した完成物について担保責任がある。

仲介手数料

宅地建物取引業者を通して不動産を売ったり買ったり、あるいは貸したり借りたりする場合に、媒介契約にもとづき、宅地建物取引業者に成功報酬として支払うお金のこと。
媒介手数料(媒介報酬)ともいう。

定期借家契約

平成12年3月1日の改正法施行により、借家契約時に貸主が「期間の満了により契約が終了する」ことを借家人に対して、公正証書などの書面を交付して説明する場合には、賃貸期間が終了すると借家契約も終了し、借家人は退去しなければならないとする契約。
原則として契約の更新はできず、再契約には貸し主・借家人双方の合意が必要である。

テラスハウス

2階建ての連棟式住宅のことをいう。
隣家とは共用の壁で連続しているので、連棟建て、長屋建てともいわれる。
各住戸の敷地は、各住戸の単独所有となっている。

特定行政庁

建築基準行政において、建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長を、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。

人口が25万人以上の市の市長は原則として特定行政庁であるほか、それ以外の市町村長も建築主事を置くことによって特定行政庁となる。

建築主事は建築確認等の業務を行なうが、違反建築物に対する措置等は特定行政庁の業務とされている。

は行

壁芯

建物床面積を測定する際に、壁の厚みの中心線を想定し、この中心線に囲まれた面積を「床面積」とする考え方のこと。「壁芯」と書くこともある。

この「壁心」の考え方で計算すると、壁の厚みの分が床面積に加算されるので、実際に使用可能な部分の床面積よりもやや大きな床面積となる。

建築基準法では、建物の床面積とは「壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の面積」であると規定しているので、建築基準法は壁心の考え方を採用しているということができる(建築基準法施行令2条1項3号)。

なおこの「壁心」と異なる床面積の測定方法として「内法(うちのり)」がある。

ら行

礼金

建物賃貸借契約を新規に締結する際に、借主から貸主に対して、契約締結の謝礼として支払われる金銭。将来契約が終了し、退去する際にも、借主に返還されない。

礼金

建物の賃貸借契約を締結する際に、借主から貸主に対して、謝礼として支払われる金銭をいう。
契約が終了しても通常、借主に返還されない。